2006/09/08

12. メコンの夕陽

ラオスという国は、隣国のタイ・ベトナム・カンボジアに比べてマイナーなイメージがある。

その国の存在さえ知らない人もいる。
知ってても、「鳥インフルエンザ」発祥地という嘆かわしいニュースで耳にするくらいだ。
同じ社会主義でありながらベトナムの目まぐるしい近年の発展とは雲泥の差がある。
私自身、ラオスというと、なぜか紺色とエンジと金色の横縞模様が浮かんでくる。
きっとどこかで間違ったすり込み学習をしてしまったらしい。

実際、ラオスは何もない。
何もなくても訪れた者を満足させる情緒がある。
人々の暮らし、町並み、他の東南アジアの国々が捨ててしまったものが、この国ではまだ息づいている。
国の西側をメコン川が悠々と流れている。
メコン川・・・俗文化にしっかり毒されている私は、メコン川=地獄の黙示録=ベトナム戦争という式が、これもまたすり込み学習されてしまっていた。
そう、実際にメコンに触れるまでは。

メコンをさかのぼると、その源流はヒマラヤへと続く。
一つはインダス川になり、一つは長江になり、そして一つはインドシナ半島に流れてメコン川になるのだ。
ルアンパバンのプーシーの丘から見たメコン川は巨大な泥の川だ。
澄んだ水、清らかな流れが一番良いと思う日本人の美意識からすれば、本当にお世辞にも綺麗とは言えない泥水だ。

でも、川の脇に立つ椰子の木、そして、メコンの向こうに沈む夕陽は、神々しく神聖なものに見えてくるから不思議だ。
メコンクルーズをすると、より一層メコン川を堪能することができる。
できればスピードボートよりゆっくり時間をかけて走るボートの方がよい。
川面を渡る風、岸の砂地に群れる水牛、岩、裸ん坊で水浴する村の子供たち。
北に上れば、中国の絵にでてくるような形の山に出会える。
北接するのは雲南省。
ムアンシンはもう少数民族であふれている。

南に下れば、椰子の木群が対岸をつつみ、いかにも東南アジアに来たぞ〜と感じさせてくれる。
メコン川の東岸を夕方散歩すると、夕陽が沈んでいくのが見える。
この国の時間の流れは、メコンの夕陽が一番似合う。
ラオスは何もなくていい。
人々の笑顔とメコンの夕陽があれば、幸せな気持ちになる。

宝くじでもし3億円当たったら、ルアンパバンのメコン岸にゲストハウス兼骨董屋兼カフェを建てて、のんびり暮らしたいと思う。
自然に感謝して、今あるすべてのものに感謝して、メコンの夕陽に明日が来ることを約束して、一日を終わる。
私流スローライフ。

贅沢の極みだ。

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