2006/09/08

16. カトマンズ

カトマンズはネパール王国の首都である。

そう、首都なんだよね。
なのにさぁ、なのにさぁ、空港から中心地へ向かう道は未舗装が多い。
乾いた空気、埃っぽい道、日干しレンガ造りの家々、何するでもなく通りを行く人々。
一国の首都がこれでいいのか?と思ってしまう。
私たち貧乏旅行者だけじゃなく、他国のVIPもこの道を通って王宮に向かうのだという。
ここまで庶民の暮らしが丸見えの道路を通っていくのでせうか。。。

ヒンズーの人たちの火葬場パシュパティナートでは、今日も誰かが亡くなったんだとわかる煙を上らせている。
肉屋の前には、山羊の頭だけが恨めしそうな眼で台の上に並んでいる。

その横には、胴体と手足が皮をはがれてごろりと横たわっている。
注文を受けてから、ぶつぶつと大きな包丁で解体していく。
上の棚からは、まだ羽のついたにわとりが、何匹か首のところで束になって吊り下がっている。
眼をとじているのが、なんとも嘆かわしい感じがする。

サリーをまとったおばさんたちが、地べたに座ってたらいに盛った野菜をよっている。
おばさんの向かい側から、犬も鼻先で識別している。

窓からそんな光景を眺めながら、車は中心地へ向かっていくのだ。
東側のアジアとは、全く異なる気候と民族と習慣が色濃く残っている。

傾きかけたレンガの家とぼこぼこの道路はうす茶色の景色にかすんでいるが、色鮮やかなサリー、色彩豊かなトビー帽、浅黒い肌に彫りの深い顔立ちの人々、赤い額、明らかにここは私たちの住んでいるアジアとは違う。
日本人と顔立ちがよく似ているチベット人も多い。
私はいつも「チベット人でしょ?」と間違えられる。

ヒンズーのお寺だけでなく、チベット仏教のお寺もたくさんある。
仏教のお寺だが、その極彩色の艶やかさに圧倒される。
侘び寂び文化のしっとり落ち着いた日本のお寺とは異なるのだ。
金々ギラギラの東南アジアのお寺とも異なる。

東・東南アジアのほとんどの国が、ここは東京?と間違うほど近代的に発展している。
少なくとも、一国の首都と名を飾るところは、せめてそこだけでも都市の暮らしがうごめいている。
でも、カトマンズは違う。
精一杯の近代化をしているのだろうが、アジアらしい匂いが空気だけじゃなく、人にも物にも風景にも溢れている。

そんなネパールの入り口、カトマンズ。
なんともわかりやすい縮図がそこにはある。
人間の生活の匂いが音がぬくもりが 、そして現実がそこにはある。
なんともアジアらしい空気がそこにはある。
カトマンズは、もちろん大好きな街の一つだ。
嘘ついたり騙したり、あわよくば・・・と思う素直な感情がストレートに伝わってくる。
なのにどこか憎めない。

外見ばかりとりつくろい、国民総中級以上の暮らしをしているのにまだまだ見栄えのよいことに拘って、贅沢を言えばキリがないのにリッチな雰囲気や生活に渇いた欲望を持ち続ける日本。
同じ時の流れの中に生きている人間同士なのに。

物の豊かさも確かに大切だとカトマンズに来ると切実に思う。
しかし、心の豊かさもそれ以上に大切なのではないかと感じてならない。

感じずにはいられない街なのだ。

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